「歌声に科学を。発声に医学を。」
喉頭科学の歴史は、常に歌唱音声の探求と共にあります。1854年、発声教師であるManuel Garcíaは間接喉頭鏡を発明し、人類で初めて歌唱時の声帯の観察に成功します。その後、喉頭鏡は医療に応用され、今日の耳鼻咽喉科学、喉頭科学の発展の礎になりました。「話す」ことと「歌う」ことは、どちらも楽器が声帯であり、完全に同一直線上にあります。「話す」ことの障害である発声障害の治療のためには、その機能を最大限に使う「歌う」声帯のメカニズムの解明が必要だと考えて、Singing Voice(歌唱音声)の医学研究を行っています。たとえ現在の医学では治せなくても、治らないことを諦める医師ではなく、治すことを諦めない医師でありたい。そのために、「歌う」声帯の謎を解明することは、これまでの歴史がそうであったように、これからも非常に大きな手がかりだと考えています。
「音声医学」×「音声学」×「ボイストレーニング 」
パフォーマンスで声帯の力を最大化するために。医学的側面、科学的側面、機能的側面、あらゆる角度から考察し、可能性を探ります。
MEDICINE
声のトラブルである音声障害は、耳鼻咽喉科の中でも、音声医学が専門となります。ボイスユーザーにとって最も大切なことは、声帯を最適なコンディションに保つことです。声帯は声という音を奏でるための唯一の楽器です。しかしながら、声帯は人体の一部であり、他の楽器と異なり、買い替えたり、交換することはできません。音声医学を専門とする耳鼻咽喉科で、医学的に正しくメンテナンスすることをお勧めいたします。
RESEARCH
音声の基礎研究は、声帯や喉頭など人体の仕組みからアプローチする音声医学、また音声という物理学的な特性を解析する音声学(音響学)の2つに大別されます。歌唱は、声帯の機能が最も亢進した状態であり、未解明である歌唱時の音声生成のメカニズムについて、音声医学、音声学の両面から研究を行っています。将来的には、医学の臨床や、歌唱訓練の現場への応用を目指しています。
PEDAGOGY
発声教育の歴史における重要なテクニックから最先端の近代的な手法まで取り入れて、科学的・医学的根拠に基づくボイストレーニングを行います。このような試みは、声帯の能力を最大化するだけではなく、同時に声帯の物理的負担を軽減させるため、声帯のコンディションを更に向上させるためにも重要であると考えています。世界と同水準、やがてはより高水準の科学・医学と発声教育の連携を目指しています。
PROMISE
科学と科学研究は社会と共に、そして社会のためにあります。医学も、病に苦しむ患者、ひいては社会のためにあります。常に医師であり、科学者であることを念頭におき、音声を軸足に、自分が持ちうる医学・研究・教育のあらゆる側面で力になりたい、社会貢献をしたいと考えています。その中で、「歌」とは何か、という未踏の領域に対しても学術的に挑戦を続けて研究していきたいと思います。願わくば「誰もが自由に歌える未来」の実現のために、邁進したいと思います。